大舞台

小学生の頃、親戚の叔母が日本舞踊をやっていて習う事になりました。始めはお稽古と称して週一回叔母の家に行き、お稽古着に使用している着物の着方を覚え、少しずつ日舞に慣れていきました。

1,2年たつた位から大きな舞台に立つことに。
しかも市民会館でとても大きな舞台装置や高い天井、スポットライト、想像しただけで緊張してしまう大舞台でした。

コンサートとか役者さんの舞台演劇とか行っている大きなホールでした。私が習っていた日舞の流派が地方では大きな所で、年に何回か盛大な公演をやります。主演クラスの役が私に付いて、猛練習が始まりました。

週末はいつも偉い先生の家まで行ってひたすらお稽古です。女形がやりたいのに男役が上手いからと褒められ、期待されていました。

台詞まで付き、言い回しに苦労をし、他の方のお稽古の間正座で待たされ辛い日々でした。

その甲斐あっていよいよ当日。
自分と他の子供達と共同で楽屋を与えられ、まず大きい師匠さんの所に行き正座で米つきバッタのようにひたすら挨拶をして、メイクをして鬘を被り、衣装を着させて貰い、舞台に立ちました。

その時の題目は着物問屋のお嬢さんと丁稚が恋に落ち、お嬢さんがお見合いを嫌がって丁稚と駆け落ちしようとするという話で、小学生の私はあまり理解出来ぬまま低学年の女の子を相手に演じました。

もちろん私は男役です。その後何回かその市民会館で舞台に立ち、花道も走り、貴重な体験をしました。

今では懐かしい想い出ですが、あの時の初めて舞台に立った時の緊張感と高揚感は今でも忘れられないです。